5月6日(月・祝)、ルイス・ネリ(メキシコ)は東京ドームのリングで、現在のボクシング界で最もタフなチャレンジに挑む。ネリの前に立ちはだかるのは、スーパーバンタム級のアンディスピューテッド・チャンピオンに君臨するノックアウトアーティスト『モンスター』井上尚弥だ。
ネリ(35勝1敗、27KO)にはこれまでにもトップクラスのボクサーと対戦した実績がある。32歳のサウスポーはWBCバンタム級、スーパーバンタム級で2階級制覇を果たしてきた。俊敏かつパワフルで、器用さのあるボクサーであり、自国で戦う井上にとってもタフな試合となる可能性は高い。
しかし、ネリのこれまでのキャリアは決して輝かしい側面ばかりではなかった。元世界チャンピオンでありながらもネリはつい最近まで日本のボクシング界から無期限活動停止処分を受けており、今回の井上との一戦が実現するにあたっては日本ボクシング協会の承認を受けることが必要だった。ありがたいことにその処分は解かれ、世界中のボクシングファンは今、このスリリングな対決に胸躍らせることができている。
なぜネリは日本のボクシング界から無期限活動停止処分を受けていたのか? ここではネリの波乱に満ちた過去について紹介していく。
ルイス・ネリはなぜ日本のボクシング界から無期限活動停止処分を受けたのか?
2017年、ネリは12度にわたって王座防衛を続けていたWBCバンタム級世界王者・山中慎介を4回TKOで沈めた。だが試合後になって、試合前に行われたドーピング検査における禁止薬物(ジルパテロール)の陽性反応が判明して大問題に。『リングマガジン』は即座にネリの王座を剥奪したが、WBCはネリの処分を保留した。
結局、WBCはESPNを通じて発表した声明の中で、「(WBCは)ネリにとって不利な検査結果が、パフォーマンスを向上させるため意図的に禁止物質を摂取した結果だったという十分な確証は得られなかった。すべての情報と事実を考慮し、今回の検査結果は汚染された食物によるものだったと結論づける」とした。
ネリは、トレーニングキャンプ中に大量の牛肉を食べていたことが陽性反応につながったとする宣戦供述書をWBCに対して提出している。実際、メキシコの農場には家畜のサイズを大きくするためにジルパテロールを使用している場所があることがいくつかの情報筋でも確認された。
ただ、問題はこれで終わらなかった。7ヶ月後の2018年3月、ネリと山中の再戦が行われ、山中は2回TKOで敗れた。ただ、計量時点でネリはバンタム級の制限体重を3パウンドオーバーしていた。山中はその上でこの試合に挑んだのだった。
日本ボクシング協会はこのネリの行動を問題視し、日本国内で試合する資格を無期限に停止する処分を下した。
なぜ無期限活動停止処分を受けていたネリが日本での試合を許可されたのか?
ではなぜ、日本ボクシング協会は今回、ネリの日本での試合を許可したのか。その理由は発表されておらず、推測することしかできないが、最も受け入れられている推測は以下の通りだ。
ネリは二度にわたってキャリアの終盤に差し掛かっていたベテランの山中を倒した。しかし、その勝利はいずれも正式に認められた状況で勝ち取られたものではなかった。この事実は日本ボクシング協会にとっては受け入れがたいものだったはずだ。
もしこの屈辱を晴らすことができるボクサーがいるとすれば、井上尚弥以上の適任はいない。『モンスター』は現在、世界でも屈指のボクサーであり、圧倒的有利を伝えられる強力なパンチの持ち主だ。
なお、井上本人はこの試合がリベンジマッチとなることを否定している。