2024年のパウンド・フォー・パウンドを制するのは井上尚弥か、クロフォードか?
スーパーバンタム級のアンディスピューテッド・チャンピオン井上尚弥は、パウンド・フォー・パウンド(PFP)最高峰のボクサーなのか。 5月6日(月・祝)、日本が世界に誇るチャンピオンが東京ドームで迎えるルイス・ネリとの世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチが近づくにつれ、ボクシング・ファンの間ではこの議論が再燃することになるだろう。 最新の勝敗予想&オッズはこちらでチェック PFPのトップファイターを選ぶのは、言ってみれば自分の一番好きな色やお気に入りのレストランを選ぶようなものだ。最終的には好みの問題になってしまう。過去10年間で言えば、フロイド・メイウェザーが階級を問わず世界最高のボクサーと考えられてきた。しかし、それをマニー・パッキャオのファンの前で口にすれば、反論されるに違いない。それもかなり強烈に、だ。 現在のPFPのランキングでは、井上を推すか、ウェルター級王者のテレンス・クロフォードを推すか、ファン・専門家の間でも意見が分かれるところだろう。 両者ともに無敗を維持している 両者ともに優れたテクニックを持っている 両者ともに複数の階級で王座に就いている 両者ともに2階級のアンディスピューテッド・チャンピオンに輝いている はっきり言って、井上とクロフォードの上に出るものはいない。そこで、ここでは、『モンスター』井上尚弥が今日のボクシング界最高のボクサーであるという意見を、名門『The Ring』誌(リングマガジン)の元編集人で、現本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイが検証する。 井上尚弥は世界最高峰のPFPファイターか? 2023年に階級を上げ、4階級制覇を果たした今、井上の凄さを過小評価することは難しい。 しかしながら、現時点では『リングマガジン』では世界最高峰のPFPファイターはテレンス・クロフォードという評価で固まっている。 2023年7月、『バド』はエロル・スペンスJr.を相手に圧巻の9ラウンドTKO勝利を飾り、ウェルター級のアンディスピューテッド・チャンピオンとなった。このアメリカ人チャンプは何年も期待されてきたスーパーファイトでセンセーショナルなパフォーマンスを披露し、その戦績を40勝0敗に伸ばした。 一方の井上(26勝0敗、23KO)もまた、スティーブン・フルトン、マーロン・タパレスを破り、スーパーバンタム級のアンディスピューテッド・チャンピオンになるという素晴らしい一年を送った。それでもクロフォードのスペンス戦勝利のインパクトが日本人チャンプの1年間を上回ったと言えるだろう。 井上尚弥vsテレンス・クロフォードは実現するか? 現時点で井上の主戦場はスーパーバンタム級(122ポンド)、井上のキャリアの中では4つ目の階級となる。一方のクロフォードは現在、彼にとって4階級目となるスーパーウェルター級(154ポンド)を目指している。 結論から言えば、クロフォードの方が明らかに体が大きく、2人の対戦はあまりにも現実味がなさすぎる。 ルイス・ネリを倒すことで井上尚弥はPFPのNo.1ファイターとなれるのか? ネリを倒せば、井上がPFPのNo.1に君臨する可能性はあるだろう。メキシコ人のサウスポーは世界クラスのボクサーで、この階級では最も脅威となる存在だ。 もしクロフォードに劣る点があるとすれば、それは試合の少なさだ。多くのファンが井上こそPFPのトップファイターだと考える理由もそこになる。『モンスター』は5月6日の防衛戦に勝利すれば、18ヶ月の間に3勝目を挙げることになる。その間、クロフォードが戦ったのはスペンス戦の1試合しかない。 もし、この2人以外にPFPのトップを狙う存在がいるとすれば、オレクサンドル・ウシクだろう。ウクライナのテクニシャンは5月18日、サウジアラビアでタイソン・フューリーと対戦する。もしこの試合にウシクが勝利すれば、1990年のイベンダー・ホリーフィールド以来となる、クルーザー級の元アンディスピューテッド・チャンピオンによるヘビー級のアンディスピューテッド・チャンピオン獲得となる。 最新の勝敗予想&オッズはこちらでチェック
井上尚弥vsルイス・ネリ戦の勝者は? 関係者・エキスパート・ボクサーたちが5月6日の決戦の勝者を予想
スーパーバンタム級のアンディスピューテッド・チャンピオン『モンスター』井上尚弥はこの10年あまり、世界のボクシング界を席巻してきた。その栄光のキャリアをさらに輝かせるべく、井上は東京ドームで挑戦者ルイス・ネリを迎え打つ。 全世界が注目する世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチ12回戦は、5月6日(月・祝)に東京ドームで開催される。 最新の勝敗予想&オッズはこちらでチェック 井上(26勝0敗、23KO)は、スピード、パワー、テクニックのバランスがパーフェクトな選手だ。2012年にプロデビューを果たして以来、そのパンチで相手選手を常に上回ってきた。2019年に行われたノニト・ドネアとのリマッチではドネアを2ラウンドで沈め、同年の『リングマガジン』年間最優秀試合に選ばれた。 一方のネリ(35勝1敗、27KO)は、現在の階級で井上にとっていちばんの強敵と言えるだろう。メキシコ人サウスポーはそのスキルとパンチ力で、これまでにWBCバンタム級、WBCスーパーバンタム級王者のベルトを巻いてきた。昨年2月にはアザト『クレイジーA』ホバニシャンを11回TKOで打ち破り、2023年の『リングマガジン』年間最優秀試合にも選ばれている。 『モンスター』が挑戦者を新たな餌食とするのか、それとも『パンテラ(黒豹)』が大番狂わせを引き起こすのか? ここでは、この注目の一戦をどう予想するか、ボクシング関係やエキスパートたちの意見をまとめて紹介する。 井上とネリ、ボクシング関係者はどちらが勝つと予想? デイブ・コールドウェル(トレーナー) ネリは経験豊富な良いファイターで、アピールもうまい。ただ、長年戦ってきた分(疲弊もしていて)井上のような選手に対しては不利に働くだろう。井上は、本当に『モンスター』だからね。 単純にパワーだけの問題じゃない。彼にはリングIQ、インテリジェンス、そしてボクシング能力が備わっている。この試合に勝つという意味では、ネリよりも井上の方に分があるだろう。井上にはこの試合に勝って、この先もさらに素晴らしいノックアウト劇を見せて欲しいと思っている。序盤は目の離せない接戦になるかもしれないが、最終的には井上がネリを仕留めるよ。 井上には全てが備わっている。ひどい展開や激しいラウンドが続く厳しい試合になっても井上が乗り越えられることは(ノニト・ドネア戦で)実証済みだからね。 シンプルに井上の方がネリよりも優れたファイターだと言える。 予想: 井上のKO勝利 ノニト・ドネア(4階級制覇の元世界チャンピオン) 井上が勝つと思うよ。井上の方がスピードも強さもある。あと、井上の方が勢いもあるね。 予想:井上の勝利 カール・フランプトン (2階級制覇の元世界チャンピオン) 井上の戦績は信じがたいものだ。いくつもの階級で戦いながら、常にトップクラスのコンテンダーたちを打ち破ってきた。彼の取り組みはボクシング界の功績となっているね。 ネリもとても良いファイターだ。ドーピング検査に失格した汚点があるとはいえ、井上を試すことができるだけの実力を持った選手だ。とはいえ、スーパーバンタム級で近い将来、井上の牙城を脅かすことのできる選手は見当たらないかな。 スティーブン・フルトン戦も、井上にとって一方的な、簡単な試合となった。あの試合以降フルトンがまるで口を開こうとしないほど、井上は本当に素晴らしかった。 ネリはいい対戦相手だし、彼を過小評価するつもりはない。ただ、井上は別格だ。彼にはスター性もある。今のスーパーバンタム級で彼を倒す選手は見当たらないし、(1階級上の)フェザー級でも多くの選手は井上には敵わないんじゃないかな。 予想:井上のKO勝利 ジョー・ギャラガー(トレーナー) 直近の試合で(マーロン)タパレスは井上を相手にいい戦いをしたと思う。そこまで脅威にならなかったが、いくつかのラウンドでは流れを掴んでいたし、強引に前に出ようとせず、ボディを打ち込んだりしていたが、井上はそれも乗り切っていった。 ネリはとても良いファイターだと思うが、(ポール・バトラー戦で)井上と対戦して思ったのは、井上は何かひとつうまくいかなかったら、他の手を打てる選手だということ。ワンパターンの選手じゃない。それが井上の素晴らしいところだ。ボクシングのスキルだけでなくシンプルに戦うこともできる。動きまわるだけでなくリングを舞うこともできる。素早いパンチを滑り込ませることもコンビネーションを繰り出すこともできる。頭からボディまであらゆる箇所を狙うこともできる。 ネリの方が一歩先を行っている?私はそうは思わない。井上とチームはここまでしっかりと計算して対戦相手を選び、ひとつひとつの階級を戦ってきた。ここでミスをするようなチームは、今までやって来られなかったと思う。ネリについてもすでに何かを見つけていて、しっかり対策しているんだと思う。 この厳しい戦いに挑むネリには敬意を表するが、私は井上がおそらく終盤にTKO勝ちをすると考えている。 予想:井上のTKO勝ち ジム・ランプレイ(スポーツキャスター) 今の井上には失態を犯すような兆候もなければ、そのキャリアに飽きを示しているような素振りもない。現在の世界でトップ2、3に入るボクサーで、テレンス・クロフォードと肩を並べる存在だと思っている。 ネリのことは正直そこまでよく知らないし、ネリが井上を倒せると言えるだけの材料も自分は持ち合わせていない。世の中的にもこの試合は井上優勢と考えられているし、実際、井上はそれだけの素晴らしいファイターだと思っている。 東京で試合が行われることも含めて、彼のKO勝利を予想するよ。観客を喜ばせたいだろうからね。 予想:井上のKO勝利 ジェイソン・モロニー(WBOバンタム級チャンピオン) (井上は)特別な才能の持ち主で、彼が倒されるのを想像するのは難しいな。 (井上が)勝つと思うけど、試合はすごいエキサイティングになるんじゃないかな。ネリも簡単にやられる選手でもなければ、逃げのびようとするタイプでもない。ノックアウトで仕留めにくるだろうから、手に汗握るボクシングになると思う。果敢に勝ちを狙って来る選手が2人揃ったら、お互いダメージを受けるチャンスも多くなるからね。 非常にエキサイティングな試合の末に、井上がネリをノックアウトすると思う。自分が(アンダーカードの武居由樹戦に)勝って、スタンドでこの試合を生観戦するのを楽しみにしているよ。 予想:井上の勝利 エキスパートたちの予想結果:井上6票・ネリ0票 最新の勝敗予想&オッズはこちらでチェック
井上尚弥の次なる対戦相手は誰?|『モンスター』を待ち受けるフェザー級王者たち
5月6日(月・祝)、東京ドームで行われるルイス・ネリ戦のゴングも鳴らないうちから、人々はすでに井上尚弥の次なる対戦相手が誰になるかを考え始めている。そのことだけでも井上の凄さが分かるだろう。実際、『モンスター』はそれだけの存在だと言える。 最新の勝敗予想&オッズはこちらでチェック 井上(26勝0敗、23KO)は、わずか2戦でスーパーバンタム級を制圧し、アンディスピューテッド・チャンピオンの座に上り詰めた。バンタム級の4団体統一を成し遂げた後、日本のスーパースターは即座にスティーブン・フルトン、マーロン・タパレスという2人のタイトルホルダーを圧倒してTKO勝利を収めた。井上は現在、世界でトップのPFP(パウンドフォーパウンド)ファイターと言っていいだろう。 対するネリ(35勝1敗、27KO)は、この階級に残された最後のチャレンジャーだろう。実績もあるハードパンチャーのサウスポーは、これまでにバンタム級、スーパーバンタム級のベルトを巻いてきている。元王者のブランドン・フィゲロアに敗れ、キャリア唯一の黒星は喫したが、その後アザト『クレイジーA』ホバニシァンを倒して復活、2023年の『リングマガジン』年間最優秀試合にも輝いた。 ここでは、ネリを打ち倒した暁に井上が5階級制覇に向けて対戦すると目されるフェザー級の世界チャンピオンたちを紹介する。 井上尚弥 vsアルベルト・ロペスの可能性 ジョシュ・ワーリントン、マイケル・コンラン、ジョエ・ゴンザレス、阿部麗也を次々に打ち破ったロペスはフェザー級において現在トップのボクサーと考えられている。 IBF世界フェザー級王者のロペスは常にプレッシャーをかけてくるタフなファイターで、今まさに絶頂期にある選手。プロキャリア32戦で2敗しているが、これまでKOされたことはなく、常に激しい試合を繰り広げてきた。井上がロペスを相手にどれだけダメージを与えられるかは見ものだ。 両者ともプロモーターはトップランク社で、ESPNが中継をしている。その意味では試合は組みやすいだろうし、年間最優秀試合にもなりうる好カードだ。 井上尚弥 vsラファエル・エスピノサの可能性 エスピノサもロペスと同じメキシコ出身のフェザー級チャンピオンだが、そのスタイルはまるで異なる。エスピノサはWBOフェザー級王者でありながら、身長185センチ 、リーチは188センチという規格外のサイズの持ち主だ。 165センチの井上は身長で20センチ 、リーチで17センチのハンデを負うことになる。日本が誇るファイターはこの体格差を克服して、持ち前のパンチ力を活かすことができるのか、非常に興味深い試合となりそうだ。 ただ、エスピノサ(24勝0敗、20KO)は昨年12月、前評判の高かったキューバ人王者ロベイシ・ラミレスを破って現在のWBOフェザー級王座を手に入れたばかり。エスピノサ陣営とすれば、経験豊富な井上と対戦する前に1、2戦防衛戦を組んで、稼いでおきたいところだろう。 ラミレスvsエスピノサ戦もトップランク社のプロモートだったので、マッチメークという点ではこの一戦も実現しやすいかもしれない。 井上尚弥 vsレイモンド・フォードの可能性 今年3月、オタベク・ホルマトフ(ウズベキスタン)を破ってWBA世界フェザー級王座を手に入れた試合を見れば、現時点で井上の対戦相手として一番魅力的なのはフォードかもしれない。 初のタイトルマッチで不利が予想されていたにもかかわらず、フォード(15勝0敗1分、8KO)にとっては年間最優秀試合の候補にも上がるだろう戦いぶりを見せ、まさかの12回TKO勝利を収めた。 フォードの初防衛戦は5月18日、マッチルームボクシングがプロモートするタイソン・フューリーvsオレクサンドル・ウシクのアンダーカードとして、ニック・ボールを挑戦者に迎えてサウジアラビアのリヤドで行われる。 若くて野望に満ちた25歳のサウスポーにとって井上戦は魅力的だろう。難点があるとすれば、フォードがフェザー級に留まるのは非常に厳しくなっていること。タイトルを獲得した直後からスーパーフェザー級転向の話も出ていたほどだ。 井上vsフォード戦を実現するには、残された時間は多くない。 井上尚弥 vsレイ・バルガスの可能性 井上尚弥とレイ・バルガス(メキシコ)の対戦は面白いだろうと思われた時もあったが、ボクシングではタイミングが重要だ。33歳のバルガスはすでに旬を逃しつつある。 元スーパーバンタム級王者のバルガスは2022年7月にフェザー級へ階級を上げ、スプリットデシジョンの末、マーク・マグサヨ(フィリピン)からWBCのベルトを勝ち取った。 その後、空位だったWBCスーパーフェザー級の王座決定戦に挑むもオシャキー・フォスター(アメリカ)に判定負け。今年3月にはニック・ボール(イギリス)を相手にフェザー級タイトルの防衛戦を行い、引き分けの判定で辛くも防衛を果たしている。 バルガス(36勝1敗1分、22KO)は、ここ5年で5試合しか戦っていない。ベテランのメキシコ人ボクサーの戦いぶりは活発とはいえず、調子も下降気味。今の状況を考えれば、バルガスにとって井上との対戦は避けた方が賢明だろう。 最新の勝敗予想&オッズはこちらでチェック